これまでワインの生産者になることは資産を有する者にしか与えられなかった特権？この疑問に真っ向から挑んだのがウーゴ・メンデスだった。リスボン北東部のサンタレンに生まれ育ったウーゴは、癌撲滅のためのバイオテクノロジーを学ぶが、ワインへの思いが彼の人生を大きく転換させた。
2004年にワイン造りの現場に入り、セラースタッフとして働く中で自らのワインを造り出す事が彼の大きな目標になってきた。11年間、ワイナリーで働きワインメーカーまで務めたウーゴは、2016年自らのブランドを立ち上げた。その際、クラウドファンディングを立ち上げ、ワインの先行販売を行い資金を調達し、最初のワイン「ウーゴ・メンデス リスボア ブランコ」を877本造ることが出来た。それはワイン業界において全く新たなアプローチによるワインの誕生だった。
SNSやブログ、ワインクラブなど、創造性にあふれたアプローチでポルトガル国内で消費者とダイナミックなワインコミュニティを築き、2019年より世界へ輸出されるようになった現在でもクラウドファンディング以来、彼のワイン造りに共感してきた消費者からの絶大な支持を基盤としている。

ウーゴ・メンデスは現在、リスボアとテージョのワインを送り出している。生産数は両地区各15,000本で合計30,000本。
近年、ワイナリーやブドウ畑も所有する予定ではあるが2016年以来、ブドウは優良な生産者から自らの基準を満たす品質の物のみを購入し、ワイナリーもリスボアとテージョのワイナリーの一部を借りて、そこに醸造設備を整えてワイン造りを行っている。
リスボアやテージョは首都リスボンの需要に応じる大量生産のワイナリーが数多くあり、そのためポルトガル国内で最も化学肥料などに痛められている地域だった。ウーゴはこの地域から本来のテロワール表現したワインが造れることを着目し、そこから産地の持つ本来の素晴らしさを世界に知らしめたいという強い意志の下に、自らが求める品質のブドウを得るために化学的な介入の少ない生産者を探すことから始め、選り抜きのブドウを通常より高い価格で買って優良な生産者を支えて、有機的な栽培法への転換を促進に際してもブドウ農家とリスクを共有するということを行っている。

ウーゴはその地域とその土地を最大限に表現したワイン造りを目指している。それはワインメーカーによって造られたワインではなく、ブドウが本来持っている産地の味わいを如何に表現するかが重要との考えから出発している。
ウーゴの造るリスボアのワインは、彼のワインに対する見方を端的に表現している。それは糖度ではなく酸度に基づいてブドウを選ぶことがベースとなっており、フレッシュさ、フルーティーさ、塩味・・・そしてすべての要素のバランスを保つことが重要と考え、その結果がウーゴ・メンデスのワインの味わいを形作っている。
また熟成のポテンシャルに注目しており、彼のワインには全てボトリングの日付が書かれており、ナンバリングされている。