世界のワインのコラム

シャンパーニュ 美味しさの秘密/個性際立つRM(栽培醸造家)

■シャンパーニュとスパークリングワインの違い

グラスの中で立ち上る泡に心も弾む「スパークリングワイン」!「スパークリングワイン」とは、正確に言うと3気圧以上のガス圧を持った発泡性ワインですが、その華やかな印象でお祝いの席やパーティの乾杯にふさわしい人気の高いワインです。スパークリングワインは世界各国で造られており、シャンパーニュ(フランス)、カバ(スペイン)、フランチャコルタ(イタリア)、ゼクト(ドイツ)などが有名です。
では「シャンパーニュ」とはどのようなスパークリングワインなのでしょうか。
「シャンパーニュ」とは、フランスの首都パリの北東部シャンパーニュ地方で栽培された認定品種のブドウのみを使い、同地で醸造、瓶内二次発酵を含む「シャンパーニュ方式」で造られたスパークリングワインであり、それ以外のスパークリングワインを「シャンパーニュ」と呼ぶことはできません。
「シャンパーニュ」が他のスパークワインとは異なり特別とされる理由を探っていきましょう。

■シャンパーニュ 美味しさの秘密

シャンパーニュの優雅な味わいが生み出される秘密、それは下記の条件を満たすワイン造りにあります。

特定の品種(シャルドネ種(左)、ピノ・ノワール種(右)、ムニエ種)
シャンパーニュはシャンパーニュ地方産の指定の品種(上記3種)を使って造られます。フランスのワイン産地としては北限に位置するシャンパーニュ地方。その冷涼な気候と白亜質の土壌から、ブドウにしっかりとした酸味とミネラルをもたらします。

シャンパーニュ方式にて製造
「シャンパーニュ方式」とは、一般的な方法で発酵させたワインをブランドイメージに沿って調合(ブレンド)し、ショ糖と酵母を添加して瓶内で二次発酵を行います。そしてひと瓶毎、動瓶(ルミアージュ)により澱をボトルの口にためた後、澱抜き(デゴルジュマン)を行い、リキュールを添加(ドザージュ)し15か月以上熟成します。
このような手間と時間をかけたプロセスを経て造られたシャンパーニュには、細かくて繊細な泡(持続性あり)に熟成によるコクと旨味が加わり、ガスを注入するワインにはない、複雑で気品ある味わいが生まれます。

■シャンパーニュの種類

シャンパーニュは下記のようにブドウ品種や瓶内の熟成期間などによってグレードなどが異なります。
エチケット(ラベル)にも記載されていますので、選ぶ時の参考にしてください。

<熟成の違い>
●ノン・ヴィンテージ(NV):複数のヴィンテージをブレンドして造られるスタンダードタイプ。瓶詰め後、15ヶ月以上の熟成。
●ミレジム(ヴィンテージ・シャンパーニュ):良い年のブドウのみで造られ収獲年を表示した高級シャンパーニュ。瓶詰後、3年以上熟成。

<使用したブドウ品種の違い>
●ブラン・ド・ブラン(美しい酸味があり軽やかでエレガントな味わい):白ブドウのみ(基本的にはシャルドネ100%)で造られた白のシャンパーニュ
●ブラン・ド・ノワール(コクがあり、力強い味わい):黒ブドウのみ(ピノ・ノワール、ムニエ100%)で造られた白のシャンパーニュ
●ロゼ(ロゼ色のシャンパーニュ):ワインの色付けは次の方法のどれかによって造られます。
①黒ブドウを直接圧搾する ②黒ブドウの果皮を一定時間果汁に漬け込む(セニエ) ③白ワインに赤ワインをブレンドする。

<畑の違い>(シャンパーニュ319ヵ村の内、グラン・クリュ:17ヵ村、プルミエ・クリュ:44ヵ村)
プルミエ・クリュ:プルミエ・クリュに格付された畑のブドウを90%以上使用
グラン・クリュ:グラン・クリュに格付けされた畑のブドウを100%使用

<甘辛度の違い>
シャンパーニュは澱引き後に砂糖のリキュールを加えます(ドザージュ)。リキュールの量で甘辛が決まります。

■シャンパーニュの生産者 個性が光る栽培醸造家(RM)

シャンパーニュには5000以上の生産者がいて、主に大手メゾン(メーカー)と栽培醸造家(RM)に分かれます
●NM(ネゴシアン・マニピュラン):大手のメーカー、ブドウは農家から購入し醸造を行う。 
●RM(レコルタン・マニピュラン):自社の畑で作ったブドウでワイン造りを行う栽培醸造家。(約5000社
)全生産量の7割を造っている大手メゾンに対し、RM生産者は、自社でブドウ栽培から醸造までを行うため、大手には求め得ない造り手の際立った「個性」を表現することができます。

大手メゾンは多くのブドウを農家から購入するのに対し、RM生産者は自らブドウ栽培を行っているためビオロジックやビオディナミといったブドウ栽培が可能であり、土地の個性を打ち出すことができます。
また大手メゾンはアッサンブラージュ(ブレンド)を基本としたメゾンのスタイルを優先するのに対して、RMではワイン造りにおいても、一次発酵に自生酵母を使用して土地の個性を表現したり、生産者独自のリザーブワインによって複雑味を与えたりなど、それぞれにこだわりのワイン造りを行っています。また健全で完熟したブドウで造るワインにはリキュールで甘さを追加する必要がないため、低いドザージュやドザージュゼロとする生産者が多いことも特徴です。

有名ブランドが名を連ねる大手メゾンに対して、造り手独自の拘りのワイン造りを行っているRM生産者はその唯一無二の「個性」が評価され、多くの生産者が既に地位を築いています。RM生産者の最高峰と言われるジャック・セロスを始め、自信を持ってお勧めする主なRM生産者をご紹介します。

ドメーヌ ジャック・セロス:独自の自然農法を実践するレコルタンのカリスマ
自然農法の提唱者、福岡正信を師と仰ぎ、セロス自身の自然なアプローチでブドウ栽培を行う。醸造にはオーク樽を使い、自生酵母による自然発酵。リザーブワインは過去4ヴィンテージをブレンドしたワインを使用し、ボトリング後4年以上の瓶内熟成。その結果、酸化熟成香が強く、複雑なフレーバーに富んだ味わいとなる。
※生産数が少なく日本への輸入も限られているため、現在通信販売は行っておりません。
※ジャック・セロスの詳細についてはこちら(木下インターナショナルのHP)をご覧下さい。

シャンパーニュ ラルマンディエ-ベルニエ:ピュアさを追求するビオディナミのスペシャリスト
99年から全所有畑をビオディナミに転換し、さらに自生酵母による自然発酵。無濾過、無調整など、人為的な介入を極力抑えたワイン造りを行う。単一クリュや単一区画のキュベも手掛け、いずれも4g/l以下の低ドザージュでエクストラ・ブリュット仕立て。原料ブドウの質の良さを感じる、純粋かつ奥行のある味わい。

シャンパーニュ スエナン:土地の個性を極限に表現する探求者
09年から家業を継いだオレリアン・スエナンは、事実上のビオロジック農法を実践。テロワールをより強く反映したシャンパーニュを造るため、自生酵母による自然発酵、最小限の亜硫酸添加と、人の手の介入を抑えた手法をとる。
※生産数が少なく日本への輸入も限られているため、現在通信販売は行っておりません。
※スェナンの詳細についてはこちら(木下インターナショナルのHP)をご覧下さい。

シャンパーニュ クリストフ・ミニョン:ムニエへの情熱溢れる挑戦者
ヴァレ・ド・ラ・マルヌでビオディナミを実践。ムニエの持つ可能性に着目し、ブドウ栽培からシャンパーニュ造りに至るまで徹底したこだわりを持ち、ムニエを使って最高のシャンパーニュを造り出している。

シャンパーニュ アルノー・ド・シューラン:4世代続く生産者。コート・デ・バールのピノ・ノワールを生かした円やかな味わいが魅力。
シャンパーニュ ルナール・バルニエ:長期熟成による「テロワー ルの多様性」を尊重。栽培はリュット・レゾネを実施。
シャンパーニュピオロ:ヴィオディナミを実践し、単一区画、単一ブドウ品種、長期熟成、ノン・ドサージュを信条とする。

■シャンパーニュの楽しみ方

シャンパーニュは購入後、通常のワインと同様に冷暗所で保管してください。そして開栓する前には、よく冷やしてからお楽しみください(NVでは6~8℃、ヴィンテージシャンパーニュなら10℃位がお勧め)。瓶の内圧が高いため、コルクの飛び出しや噴きこぼれに注意しながら安全に開栓しましょう。

シャンパーニュを楽しむためのグラスについて、フルートグラスは最も泡立ちが美しく見えるので、軽やかなノンヴィンテージを食前に飲む場合に適しています。熟成期間の長いヴィンテージシャンパーニュなど、複雑な香りやシャンパーニュの味わいをゆっくりと楽しみたい場合は、白ワイングラスが最適です。時間の経過による香りや味わいの変化も楽しむことができます。

シャンパーニュはすっきりとした酸と爽やかな泡が口内をリフレッシュしてくれるので、食前から食後まで通して楽しめますが、冷やして食前から楽しむ機会が多いため、特に前菜の料理によく合います。
良く冷やしたスタンダードなものには、魚介のカルパッチョ、生ハムとハーブのサラダ、グリルした魚や鶏肉などにハーブやレモンの風味付けた料理、お造りなど和食全般、白カビのチーズやフレッシュなフルーツにもよく合います。
ブラン・ド・ブランのように軽快で引き締まったものには、シーフードが特にお勧め。生牡蠣や魚介の天ぷらなど、繊細な風味とミネラル感が海の幸の美味しさを引きだしてくれます。
ブラン・ド・ノワールは味わいにコクとふくらみがあるので、肉料理にも合わせられます。少し高めの温度にして、レバームース、蒸し鶏、ローストビーフや鴨のローストフルーツソース添えなどと合わせて。
ロゼは赤い果実のフレーバーがあり、スパイスとも合いますので、エビなどの海鮮のグリル料理、スパイシーな中華料理やエスニック料理にもよく合います。
ヴィンテージのように豊かなフレーバーを持つシャンパーニュであれば、熟成による芳ばしさがあるので、皮目を芳ばしく焼いたりパイ包みにした魚料理なども良いですが、食後にシャンパーニュだけをゆっくりと楽しむのも至福の時間となることでしょう。

優雅で気品に満ちたシャンパーニュ。繊細な泡のフレッシュさと豊かな酸味やミネラル感は、上質な料理、特に和食との相性も抜群です。お祝いの席やパーティを華やかに演出したり、特別なプレゼントとしてなど様々なシーンで活躍している「シャンパーニュ」は無敵なワインと言えるでしょう。
中でもRM生産者は、独自のポリシーで栽培から醸造までを行う小規模な造り手ですが、彼らが造る拘りのシャンパーニュには、大手メゾンにはない個性豊かな魅力に満ちています。それぞれの土地のテロワールを表現したピュアな味わいをお楽しみください。


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世界のワインコラム『衝撃的なシャンパーニュ生産者の系譜 その1』に続く⇒