世界のワインのコラム

フランスの銘醸地 ブルゴーニュ

歴史ある産地から生まれる銘醸ワイン

ワイン好きには憧れの産地、ブルゴーニュ。フランスの東部にあり、かつてブルゴーニュ公国の首都として栄えたディジョン市が中央に存在します。なかでもコート・ドール(黄金の丘)と呼ばれる中心部では、ロマネ・コンティやモンラッシェなど世界最高峰のワインが生みだされる銘醸地です。

ブルゴーニュ地方のブドウ畑総面積は約24,000ha(東京ドーム(4.7ha)約5100個分)。生産される主なブドウ品種は、赤ワイン用の「ピノ・ノワール」と「ガメイ」、白ワイン用の「シャルドネ」と「アリゴテ」です。
ブルゴーニュではワインの大半が白はシャルドネ、赤はピノ・ノワールの単一品種でワインが造られているため、生産量全体の8割が「ピノ・ノワール」と「シャルドネ」で占められています。
単一品種から造られるブルゴーニュワインですが、地域によるテロワールと造り手の個性が反映されたその味わいは様々です。
高価なワインのイメージがあり、近年では環境の変化などで収量が減少しさらに高騰が続くブルゴーニュワインですが、その魅力に迫ってみましょう。

ブルゴーニュ地方の主な地区と特徴

(1)シャブリ地区
ブルゴーニュ北部に位置し、冷涼で日照時間が長く、化石層が多いキンメリジャンと呼ばれる白亜の石灰質土壌で、透明感がありミネラル豊富なワインが生まれます。シャルドネの産地として有名で、かつて「シャブリ」は高級な辛口白ワインの代名詞とされたほど世界でも名高いワインです。

シャブリ:ドメーヌ ジャン・コレ・エ・フィス

(2)コート・ド・ニュイ地区(コート・ド・ボーヌと合わせてコート・ドール(黄金の丘)と呼ばれる)
ブルゴーニュ北部に位置し、生産されるワインはほとんどが赤ワインで、世界最高のピノ・ノワールを生み出す銘醸畑がひしめいています。特にジュヴレ・シャンベルタン、モレ・サン・ドニ、シャンボール・ミュジニー、ヴ―ジョ、ヴォーヌ・ロマネ村などが有名です。

ジュヴレ・シャンベルタン他:ドメーヌ マルシャン・フレール
オート・コート・ド・ニュイ他:ドメーヌ アンリ・ノーダン・フェラン
ニュイ・サン・ジョルジュ:ドメーヌ シコト

(3)コート・ド・ボーヌ地区(コート・ド・ニュイと合わせてコート・ドール(黄金の丘)と呼ばれる)
コート・ド・ニュイの南側に位置し、特級畑はほとんどが白ワイン(赤はコルトンのみ)で、特にムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェが三大銘醸地として有名です。
同じシャルドネでもシャブリと異なるのは、樽発酵・樽熟成したリッチなスタイルが多いこと。新樽率も高く、ナッツやバターのような風味のある何十年も熟成する長期熟成型ワインを生みだしています。

(4)コート・シャロネーズ地区
コート・ド・ボーヌ地区の南、石灰質と粘土、泥灰質が混ざった土壌で、地中海性気候。そのため、フルーティでミネラルが感じられるワインとなり、手頃で美味しいワインが数多く作られています。メルキュレ、モンタニーなどがあります。

(5)マコネ地区
ブルゴーニュ南部にあり、コート・ド・ボーヌ地区と同様に、地中海性気候の影響を受けています。シャルドネの栽培が盛んで、白ワインが有名な産地。マコン・シューペリュール、マコン・ヴィラージュなど、お手頃で飲みやすいワインが人気です。同じシャルドネでもコート・ドールより熟すため、トロピカルフルーツのような香りがあり、より芳醇で丸みのあるボディとなります。

マコネ:ドメーヌ ロジェ・ラサラ

(6)ボジョレ地区
ブルゴーニュ最南端に位置するボジョレは、毎年11月第3木曜日に解禁される、新酒のヌーヴォーが有名です。大半がガメイから造られる赤ワインで、白、ロゼも少量生産されます。大陸性気候の為、しっかりした果実味のブドウが実ります。ボジョレ地区北部には自らの村名を名乗る10のAOCがあり、クリュ・デュ・ボジョレと総称され、熟成にも耐えうる複雑な味わいのワインが生まれています。

ボジョレ:ドメーヌ ジュベール

土地の個性(テロワール)と格付け

ブルゴーニュ地方は、気候と一日の寒暖差や土壌も含めてブドウの栽培に適しており、細分化された畑の区画(クリマ)ごとに味わいが異なることが特徴です。同じように造っても味わいに差が出るのは、畑をとりまくさまざまな要素が絡んだ「テロワール」が作用しているから。今では世界のワイン産地で使われる「テロワール」の概念は、ブルゴーニュで生まれました。ブルゴーニュではほとんどが白はシャルドネ、赤はピノ・ノワールの単一品種でワインが造られるため、同じ品種でも味わいに土地の個性が反映されやすいと言われています。

ブルゴーニュ地方では、よいブドウが実るブドウ畑を細分化して区画(クリマ)を作っており、認定されているクリマ(区画)の数は2,500以上あります。
ブルゴーニュの土壌は石灰岩と粘土質の地層で、場所によって少しずつ成分が異なっており、その違いがクリマに実るブドウの違いに現れてきます。加えて、緩やかな丘陵地帯が南北にうねりながら伸びている為、クリマ毎に日照条件と気温にも違いが生じ、それがブドウの生育に大きく影響しワインの個性となっていきます。このクリマ(区画)ごとの条件の違いが、ブルゴーニュワインの魅力と個性の源となっています。

地区ごとの個性を分類するため、AOCでは畑ごとにしっかりと下記のようにクリマの格付けを行い、各ブドウの生産者がルールに従ってブドウ栽培とワイン造りを行っています。その結果、ブルゴーニュワインの高い品質が守られ「ブルゴーニュワイン」というブランドとして広く認知されることになりました。

※AOC:Appellation d'Origine Controlee (アペラシオン・ドリジヌ・コントローレ)の略称で、原産地呼称のこと。フランスの伝統的なワイン産地には、使っているブドウ品種や栽培方法、醸造方法などにそれぞれ固有のスタイルがあり、そのような産地の個性を守るための法的な規制がAOCです。1935年にフランスで制定されました。国立原産地名称研究所(INAO)が管理をしています。

◆グラン・クリュ(Grand Cru) 【特級畑】 生産量:全体の1%
最高品質のブドウ畑のクリマ(区画)だけで作ったワイン。ロマネ・コンティ、シャンベルタン、モンラッシェなどがあります。
ラベル表示:畑名のみ

◆ブルミエ・クリュ(Premier Cru) 【1級畑】 生産量:10%
グラン・クリュよりも一段下。特定の区画(クリマ)でとれたブドウだけを使ったワイン
ラベルへの表示:その村の名前、「Premier Cru」「1er Cru」と付けるか、「畑名」を付ける。1級はクリマ(区画)の名前を付けることも可能

◆村名クラス 【村名クラス】 生産量:36%
同じ村の畑でとれたブドウを使ってつくるワイン。同じ村の範囲であればブレンドしてもよい。
ラベル表記:村の名前を記載

◆地域名クラス 【地域クラス】 生産量:51%
ブルゴーニュ全域で造られるワインで上記に当てはまらないもの。安くて買いやすく、ブルゴーニュの入門ワインとしてもおすすめです。
ラベル表記:地域名を記載(例えばブルゴーニュ全域で作られるものは「ブルゴーニュ」)

ワインの造り手はドメーヌとネゴシアン

ブドウの栽培から瓶詰まで一貫して行う造り手を「ドメーヌ」といいます。テロワールを知り尽くした丁寧な畑仕事と醸造技術によって、個性豊かなワインを造り販売も行います。ブドウの作柄によってワインの品質や生産本数は左右される場合があります。
一方「ネゴシアン」はブドウやワインを買い付けブレンド・熟成して自社の製品として販売する生産者。複数のブドウ農家と契約するなどして取り扱い銘柄を増やしビジネスを展開しているので、不作にも備える事ができ、毎年比較的安定した品質でワインをリリースしています。

ドメーヌ&ネゴシアン:ピカール

ブルゴーニュワインの味わいと楽しみ方

ピノ・ノワールで造られた赤ワインの特徴は、ベリーやチェリーといった赤系果実の香りを持つ品種です。比較的タンニン(渋み)が穏やかで、豊かな果実味と優しい酸味、芳醇な香りを一緒に楽しむことができます。繊細さと凝縮感を合わせ持ち、長期熟成のポテンシャルも持っています。熟成させるとまろやかさが出て、別の表情を見せてくれることも特徴です。

シャルドネで造られた白ワインの特徴は「ニュートラル」と表現されることが多く、酸も穏やかで特徴的な香りがありません。それゆえ非常にテロワールを反映しやすく、冷涼な土地では柑橘の風味とほどよい酸味を持つすっきりとした味わいになり、温暖な土地ではトロピカルフルーツの風味を持つ濃厚な味わいになります。さらに樽醗酵・樽熟成を行うことにより樽由来のリッチなフレーバーが加わり、フレッシュなものからリッチなものまでバラエティー豊かな味わいが楽しめます。

ブルゴーニュワインの最大の魅力は、果実の風味を感じる豊かな香りと繊細な味わいです。グラス部分が大きく膨らんだブルゴーニュグラスはその魅力を最大限に引き出してくれます。上質なものは白も赤も大きいグラスの方が、その気品あふれる芳醇な香りと味わいを存分に堪能することができます。

ブルゴーニュワインに合わせる料理と言えば、教科書的にはブルゴーニュ地方の郷土料理である、エスカルゴ、ジャッボンペルシェ(ハムとパセリのゼリー寄せ)、コック・オー・ヴァン(鶏の赤ワイン煮込み)、ブッフ・ブルギニョン(牛肉の赤ワイン煮込み)となりますが、赤ワインのタンニンや白ワインの酸が穏やかなため、繊細な味わいとなり比較的和食にも合いやすい味わいです。味わいに旨味も感じられるので、寿司や割烹料理のお店でも人気があります。

さあ、ブルゴーニュワインが分かったら早速飲んでみましょう!
「産地」「生産者」「格付け」「ヴィンテージ」などをキーワードに選んでくださいね♪
初めての方は、ラベルに「Bourgogne(ブルゴーニュ)」と表示された「地域名クラス」からお楽しみください。