世界のワインのコラム

ナチュラルワインとは

今話題の「ナチュラルワイン」。雑誌でも特集が組まれたり「ナチュラルワイン」を売りにするワインショップや飲食店も増えていますが、どのようなワインなのでしょう。

「ビオワイン」と「ナチュラルワイン(自然派)」 

これまで「ビオワイン」等と呼ばれていたワインは、「ビオロジック」、「ビオディナミ」、「リュット・レゾネ」、「オーガニック」といった、ブドウの栽培方法に特徴的な違いがありました。
ビオワインの中でも、ビオロジック(農薬や化学肥料を使わない栽培方法)と、ビオディナミ(月の運行をベースにした暦に沿って、農薬や化学肥料を使わずに栽培をする方法)があります。
※詳しくは、ビオ(オーガニック)ワインのコラムをご覧ください。

しかし「ナチュラルワイン」と呼ばれるワインの多くにはブドウ栽培や醸造の規定はこれまで一切なく、元々は生産者自らのワイン造りの方針を語ったもので、SO2添加の無い、若しくは少ないワイン造りのスタイルを総称して「ヴァン・ナチュール / ヴァン・ナチュレル(=ナチュラルワイン)」という言い方が広がりました。


これまでワインの分類(格付け)として重視されていたAOP(原産地統制呼称)や伝統的な価値観に対するカウンター・カルチャーの様に各国に広がって、今や新たなムーブメントになっています。

※AOP(原産地統制呼称)とはEUのワイン法であり、ワインの内容を保証するために用いられています。産地名の「AOP」を名乗るには、様々な品質規格基準(産地、品種、収穫量、醸造法、試飲検査など)をクリアする必要があり、その規定を満たしたAOPのワインは、産地などの表示がなく自由に造られているテーブルワインなどと明確に区分されています。この区分は「品質の良さのランク」ではないのですが、AOPのワインは各地のワイン委員会により品質が保証されたものとしての安心感、そして伝統的な産地の味わいを表現したものとしてワインを選ぶ時の重要な指標となっています。

「ナチュラルワイン」の規定(フランス)

特に規定がないまま「ナチュラルワイン」は日本の市場にも登場し、今ではワインの一つのカテゴリーのような形で広く知られていますが、実際にはそのワインが何なのか、何も理解せずビオと混同されながらナチュラル(自然派)の言葉とイメージだけが先行している状況です。

そんな「ナチュラルワイン」に一定の規定の枠組みを作ろうとする動きがフランスの生産者に始まり、規定化が進められました。フランス ロワールのジャック・カロジェ(Domaine de la Paonnerie)が会長を務める生産者団体「ナチュレル・ワイン・ディフェンス・ユニオン」の強い働きかけにより、世界で初めてフランスの公的機関によるナチュラルワインの認証基準(「Vin Méthode Nature(自然方式ワイン)」)が制定され、2019年ヴィンテージから加盟生産者で適応が始まります。

「Vin Méthode Nature(自然方式ワイン)」の規定(一部)
※規定を満たしたワインには認証ロゴを付けることができます。
・SO2(亜硫酸)総添加量、赤白とも30mg/L以下。発酵前、発酵中の添加不可
・オーガニック栽培認証ブドウのみ使用可
・収穫は全て手摘み
・野生酵母のみの醸造
・濾過、補糖、補酸、補タンニンほか醸造段階でのほとんどの人的介入の禁止(例:低温浸漬などは可)

美しい味わいのナチュラルなワイン

現状「ナチュラルワイン」には規定がありませんので、「ナチュラルワイン」とだけ言われるワインが、自然なブドウ栽培、有機栽培(ビオやビオディナミ)や健全なワイン醸造を行っていることは外観から判断することはできません。
またSO2無添加を掲げたワインについても、上手に造られたワインは軽やかですがSO2無添加だから良質のワインが出来るとは言えません。SO2無添加では工業的な精製を行うか、余程高度な技量を持たなければ酸化、腐敗しオフフレーバーの強いワインになる場合が多いからです。

「ナチュラルワイン」には生産者それぞれにオフフレーバーも含めた独自な味わいがある場合もあり、その造り手の味わいを飲む個人個人が好みか好みでないかが分かれる世界でもあります。自然なブドウ栽培を行い、土地の特徴、原料ブドウの味わいを美しく表現したナチュラルなワインを選びたいものです。

下記に挙げる生産者は、自然なブドウ栽培を行い、土地の特徴、原料ブドウの味わいを美しく表現したナチュラルなワインを造っています。
彼らは、ビオやビオディナミを顕示するために、その農法を実践しているのではなく、あくまでも良いワイン、自ら納得できるワインを産み出す手段として、ビオやビオディナミ農法を行っています。またSO2添加、無添加も同じく結果として良いワイン、自らが納得できるワインを産み出すためにとる手段であり、無添加のワインを造ることを目的としてはいません。

<ナチュラルワイン(ヴァン・ナチュレル)を標榜する生産者>
ドメーヌ ジュベール(ビオロジック、亜硫酸添加なし)【フランス ブルゴーニュ ボージョレ】
ドメーヌ レキュ(ビオディナミ、亜硫酸ごく少量か無し)【フランス ロワール】

<ヴァン・メトッド・ナチュレル規定に近いが認証の意思のない、若しくは不要と考える生産者>
クリストフ・ミニョンスェナンラルマンディエ‐ベルニエ、ジャック・セロス【フランス シャンパーニュ】
ドメーヌ ビゾ、ドメーヌ アンリ・ノーダン・フェランマルク・ソワイヤール【フランス ブルゴーニュ】
ドメーヌ サン二コラプティ・ドメーヌ【フランス ロワール】
ヴィーニュ・ドゥ・パラディ【フランス サヴォア】
コス・メゾヌーヴ【フランス 南西地方】

<その他でSO2含有量の特に少ないワイン>
ジョアン・パト ペットナット全種【ポルトガル バイラーダ】
ニーポート ナット・クール ホワイト【ポルトガル ミーニョ】

「ナチュラルワイン」の人気はこれからも高まっていくことと思いますが、そのように呼ばれるワインでもワイン造りは様々な状況です。
私達は、産地の特徴や、ブドウの味わいを美しく表現したナチュラルなワインを、生産者の想いと共に、皆様にお届けしていきたいと思っております。