世界のワインのコラム

夏に楽しむ「冷やして美味しい」赤ワイン

夏に赤ワイン、しかも冷やして美味しい赤ワイン?そして魚介と楽しむ??

いつの間に刷り込まれたワインの常識「赤ワインは室温で肉料理と」を信奉している方には、非常識な事かと思います。

夏だから、暑いからと言って、白やロゼ、スパークリングばかりでは面白くないと思っている方も少なくないかと思います。そこで今回は、夏に冷やして楽しむ赤ワイン、しかも魚と合わせて味わう赤ワインをご紹介したいと思います。

◆その①「ニーポート ナット・クール バガ」

ポルトガルでは知られたポートワインの超老舗、ニーポートが近年獲得したバイラーダ地方の歴史あるブドウ畑で収穫された、地元品種バガ種を100%使って造り上げた、最新鋭の赤ワインです。



これまで、タンニンが強く、美味しく飲むには長期熟成が必要だったこの地の赤ワイン。ニーポートが獲得した畑では樹齢40年~100年の古木が栽培されており、そこで造られたブドウは一本の木に生るブドウの数が少なく、その分味わい深いブドウの果汁が出来上がります。

赤ワイン用のブドウの果汁は殆どの場合は緑がかった透明で、赤色は果皮から染み出してワインを色付けます。同時に、果皮や種や茎にも多く含まれるタンニン分が、ワインに渋みや苦みを与えます。ブドウの果汁に力が無ければ、果皮や種から色とタンニン分を強く抽出して味を付けなければ、ぺらぺらのワインになりますが、このナット・クールは軽く絞ってタンニン等の抽出は押さえても、充実した内容のブドウ果汁が持つ味わいで、見事なワインに仕上がっています。

〔画像〕「ナット・クール バガ」とニーポート当主ディルク・ニーポート

赤ワインの苦みや渋みは、冷やすと更に強く感じられて、これまでの常識では赤ワインは常温で冷やさないという事になっていました。その常温も、実はフランスの常温で16℃位の温度ですので、夏の日本では全く冷やさないと温くて飲めない事になります。それはさておき、一般的な赤ワインは、高級な白ワインの適温とされる10℃~12℃まで冷やすと、前述の渋みが前面に出て飲みにくくなり、果実の味わいも感じられなくなります。また、魚介の持つ生臭さを助長することがあります。

一方、今回ご案内する「ナット・クール バガ」は、タンニンの抽出は軽く行い、また、非常に果実味のある古木の葡萄を使うことによって、冷やしても実に美味しく飲めるにワインになっています。ワイン業界で最高の権威ある称号、マスター・オフ・ワインを有する唯一の日本人の大橋健一さんは、このワインはカツオのたたきに最高の相性を示すと述べられています。少し冷やして魚介と合わせていただいても、生臭さは出てきません。魚介類、特にカツオ、マグロ、サーモン、鮎、海老、蟹等と是非合わせてください。

〔画像〕「ナット・クール バガ」のブドウ畑 自然な生態系が息づく環境


⇒ 「ナット・クール バガ」はこちら
⇒ 「ニーポート」のワインはこちら

 ◆その②「ドメーヌ ジュベール ボジョレ・ヴィラージュ ラ・ロッシュ」

 ヌーヴォーで有名なボジョレ地方。この地のヌーヴォーではない普通のワインこそ、家飲みに最もお勧めしたいワインです。しかも、今回ご紹介する生産者「ドメーヌ ジュベール」のように、オーガニック栽培したブドウを酸化防止剤無添加で造り上げたワインは、実にナチュラルな味わいで、心地よい酸味と豊かな果実味と共に、スルスルと喉を通り過ぎて行きます。

マルセル・ジュベールはボジョレ地方の南に位置するブルイィ地区にワイナリーを構え、11haの自社ブドウ畑を持つ造り手です。先ほどのニーポートと同じように、マルセルのブドウ畑もブドウの木の樹齢は40年~100年で、中身の濃いブドウ果汁をワインに使うことが出来ます。ワイン造りも、この地の伝統であるマセラシオン・カルボニック法で、果実味豊かで軽快な味わいのワインを生み出すことが出来ます。

〔画像〕「私の畑ではブドウの木が岩を食べているのだ」とマルセル・ジュベール

ワイン生産者は、自らのワインにエレガントと言う表現を使う方がたくさんいます。いろんな生産者とお会いして、そのワインを試飲する機会を得て、エレガントの意味には2つある事に気が付きました。一つは、薄いだけの味わいをエレガントと言い逃れる方、もう一方は、数多くの充実した味わいの要素を持ちながら突出したところが無く、全体のバランスが見事に取れている味わいをエレガントと表現する方です。私たちが取り扱うワインでエレガントと言う場合は、後者の意味で使います。

そういった意味で、このドメーヌ ジュベールのワインは実にエレガントなワインです。喉をスルスルと通り抜けたワインの味わいの余韻を、長く口内に感じることが出来ます。

この時期、10℃~12℃に冷やして、サラダから魚介、肉料理までオールマイティにこなす、実に優れたワインと言えます。

〔画像〕花崗岩の岩肌に生えるガメイ種のブドウ

余談ですが、このジュベールもボジョレ・ヴィラージュ ヌーヴォーを造っています。毎年、11月の解禁に合わせて航空便で輸入しています。毎年、ヌーヴォーの時期に飲んでいますが、このヌーヴォー、2年~3年たっても美味しく飲める、実にヌーヴォーらしくないヌーヴォーなのです。先日飲んだ2018年のボジョレ・ヴィラージュ ヌーヴォーの味わいに驚き、つい書きたくなりました。

〔画像〕絵の様に美しいボジョレ

⇒ 「ボジョレ・ヴィラージュ ラ・ロッシュ」はこちら
⇒ 「ドメーヌ ジュベール」のワインはこちら