世界のワインのコラム
母であり生産者としても活躍する女性たち
日本では5月の第2日曜日を母親への感謝を表す日、母の日としています。フランスでは5月の最終日曜日、ポルトガルは5月の第1日曜と国によって多少異なりますが、母への感謝の気持ちに変わりはないでしょう。
さて、母の日のプレゼントには赤いカーネーションが有名ですが、美味しいワインをカーネーションと共に差し上げれば、きっと喜んでいただけることでしょう。そんな母の日に相応しい、自らも母の生産者2人が造るワインをご紹介します。
〔画像〕「ドメーヌ サラダン」のエリザベットと子供達▶
最初にご紹介するのは、フランスの中南部 アヴィニヨンに程近い、コート・デュ・ローヌ地方で1422年から続くファミリーワイナリー「ドメーヌ サラダン」です。このワイナリーは現在、マリー・ローランスとエリザベットの姉妹によって運営されています。姉のマリー・ローランスはワイン造り、妹のエリザベットは販売やワイナリーの運営を主に担当していますが、大きな試飲会には必ず2人揃って出場され、彼女たちの試飲ブースはいつも人だかりが絶えません。
〔画像〕サラダン姉妹(〔左から2人目〕姉マリー・ローランス/〔右端〕妹エリザベット)▶
2003年に体調を崩した父ロイに代わって、初めてのドメーヌの作業に加わって以降、サラダン姉妹のワイン造りが始まりました。15世紀から完全無垢なオーガニックでのブドウ造り、ドメーヌの伝統を守りつつ高い感性でのワイン造りは、瞬く間にフランスのワインラバー達をサラダンのワインの虜にしてゆきます。「ル・グラン・ヴェフール」、「ラセル」、「メゾン・ブランシュ」、「メゾン・ピック」、「アピシウス」等の三ツ星レストランを始め、パリのギャラリー・ラファイエット等でも販売されています。
彼女たちの滑らかで伸びやかなワインの味わいは、母の日のプレゼントにピッタリなワインです。そんなサラダンのワインで、母の日に特におすすめは赤ワインの「ロイ ルージュ」。滑らかで清らかな味わいは、料理を選ばず楽しむことが出来ます。
〔画像〕「ロイ ルージュ」とサラダン姉妹▲
母の日お勧めワインその2は、フランス・ブルゴーニュ地方の「ドメーヌ アンリ・ノーダン-フェラン」のクレール・ノーダンさんが造るブルゴーニュワインです。
ドメーヌはブルゴーニュ地方の中心のコート・ドールの丘の上、オート・コートにあります。この地に1850年から続くワイナリーをクレールが引き継いだのは1994年でした。いかに自然の環境を守りながら理想のワインを造るか、クレールは多くのワイナリーを訪ね歩きます。その中で知り合い、後の夫となるのがヴォーヌ・ロマネの造り手ジャン・イヴ・ビゾでした。そして2人の間には3人の男の子が生まれます。結婚後もクレールはドメーヌの当主として、理想のワインを求めてワインを造り続けます。ワイン造りの完全主義者とまで言われる夫ジャン・イヴ・ビゾ、お互いのワイン造りには一切口出しを行わないという2人ですが、クレールはジャン・イヴのワイン造りから学び、これまでドメーヌが造ってきたスタイルとは別に、自然なブドウ栽培からワイン造りを行うナチュールレンジを造り出しました。
認定の有無にかかわらず、オーガニックによるブドウ栽培を実践し、最高のレベルのブドウを収穫、それをビゾのワインを彷彿とさせる全房発酵で造り上げる薫り高く味わい深いワインは、瞬く間に注目を浴びる様になります。
ブドウ栽培は徹底して手をかけて、ワイン造りにはあまり介入しないこととしていますが、自然に任せっぱなしでは良いワインは出来ないとし、所謂、悪臭を伴うような自然派ワインとは一線を画しています。
〔画像〕3人の男の子の母親でもあるクレール・ノーダン(左)と、夫であり「ドメーヌ ビゾ」の当主でもあるジャン・イヴ・ビゾ▲
クレールのナチュラルで伸びやかな味わいを象徴する「ブルゴーニュ オート・コート・ド・ボーヌ オルキス」が母の日のプレゼントにお勧めです。
*オルキスの正式名称「オルキ・マキュラ(Orchis Macula)」とは、畑に咲く花の名前で、日本名はユーラシア蘭。クレールのナチュールレンジのワインには畑に咲く花の名前が付けられています。
〔画像〕「ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ボーヌ」とオルキスの花▶
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