ポルトガルのワインのコラム
ポルトガルの葡萄品種 [エンクルザード、アルヴァリーニョ]
圧倒的な個性を誇るポルトガル
ワイン愛好家の方々の中でも、ポルトガルワインのぶどう品種は聞いたことの無いようなものが多いかと思います。250種類以上の固有の葡萄品種があるポルトガル。1haあたりの固有品種の数は世界一を誇ります。これらの固有品種が他の多くのワイン生産国とは異なるポルトガルワインの個性をもたらす大きな要因の一つでもあります。このように多くの固有品種が今も奇跡的に残っている背景には、ポルトガルの国の歴史も大きく関係しています。
カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネといった品種を耳にすることが多いかと思いますが、もともとは世界中に植わっていたわけではなく、世界の各地域にそれぞれの固有品種のぶどうがあり、それらのぶどうからワインを造っていました。しかしながら1970年に新旧大陸でフランスのぶどう品種が流行した際、固有品種に代えてフランス産有名品種が各地で広く栽培されるようになりました。
一方ポルトガルは1938年以降、独裁政権のもと半鎖国のような状態が続き、フランス産葡萄品種が大流行した1970年代は革命や植民地独立戦争などの国内の混乱により、世界的な流行から隔離された状況であったため固有品種の植え替えは進みませんでした。
その後1990年代後半になると、世界的な動きも一転し、失われつつある固有品種による土地の個性の表現が注目されるようになります。そんな時代にEUに加盟したポルトガルはEUの経済的支援を受け、最新のワイン製造技術が導入され、革新的なワインが造り出されるようになりました。ポルトガルの生産者達は奇跡的に残った固有品種を使い世界の何処にも無い個性豊かで高品質なワイン造りを目指し、それが2000年以降の大躍進に繋がりました。
個性豊かなポルトガル葡萄品種の中から今回は注目の白ワイン品種2種をご紹介します。
ダン地方のDO法を変えさせたエンクルザード
キンタ・ドス・ロケス当主のルイス・ローレンソ氏が婿としてワイナリーに入って醸造に携わるようになった際に、ダン地方では原産地呼称のDOCダンを名乗るためには、白ワインはエンクルザード種を40%以上と、他の品種を混合することが義務付けられていました。
ルイスさんはなぜブレンドするのか、ブドウ品種のそれぞれの特徴を知るために単一品種ごとでのワイン造りを行いました。
1992年に初めてエンクルザード種100%のフレンチオーク(225L)で発酵させた革新的な白ワインを製造すると、このワインが各地で大きな反響を呼び、他の生産者も次々とエンクルザード100%のワインを造りだした為、ダンのDO協会もこのワインをDOダンワインとして認めざるを得なくなり、1998年ついにエンクルザード100%のダンワインが誕生しました。
エンクルザードの品種は国際品種でたとえるならばシャルドネ品種のように、果実のアロマは控えめながら骨格やミネラル感を特徴とする品種で、樽との相性も良く、長期熟成にも向くワインを造り出します。
近年キンタ・ドス・ロケスでは、樽香が突出した味わいにしたくないという意向から、樽発酵の割合を全体の65%に引き下げ、新樽だけでなく2年使用樽も使用しています。(残り35%はステンレスタンク発酵)エレガントな果実香と松の葉のようなハーバルな香り、樽熟成からくるやさしいバニラ香がバランスよくまとまっています。味わいはフレッシュな果実味、柔らかで爽やかな酸味、長く心地よい余韻が感じられます。
白身の肉料理、鶏肉のグリルや、ポークのロースト、クリームソースがかかった魚のソテーなどにピッタリのワインです。
⇒ キンタ・ドス・ロケス エンクルザード
世界的に注目を集めるアルヴァリーニョ
スペインでも良く造られているアルバリーニョですが、ポルトガルとの一番の大きな違いは、ポルトガルでは「Alvarinho(アルヴァリーニョ)」と表記するのに対して、スペインは「Albarinho(アルバリーニョ)」と表記し、VとB、綴りが異なることです。ポルトガルの生産者はスペイン側が綴りを間違えたのだと冗談を言っています。
ポルトガルの最北端、スペインとの国境沿いのモンサン・メルガッソ。この地域はヴィーニョ・ヴェルデの中でも特殊な地域で、素晴らしいアルヴァリーニョ種の産地として今や世界的に著名な地域。
気候的に特殊なモンサン・メルガッソは、ヴィーニョ・ヴェルデが大西洋からの影響を直接受けるのに対し、この地域は山々に囲まれた盆地で、大西洋からの海洋性気候の影響が山で遮られ、夏は暑く冬は寒いため濃厚で凝縮感のある葡萄が造られます。
伝統的なヴィーニョ・ヴェルデが地域の多様な品種のブレンドで造られ、微発泡で低アルコールの早飲みタイプなのに対し、アルヴァリーニョは単一品種から造られ、アルコール度数も一般的なヴィーニョ・ヴェルデよりも高く、長期熟成も可能なワインを造り出します。
アルヴァリーニョは熟したトロピカルフルーツの香りと華やかな果実味と酸味が特徴の品種。ポルトガルのアルヴァリーニョは醸造過程でマロラクティック発酵を行わないものが多く、フルーティで酸がしっかりして魚料理をはじめとする日本料理ととても相性がよいです。
⇒ ソアリェイロ ソアリェイロ
⇒ ソアリェイロ プリメイラス ヴィーニャス
⇒ ソアリェイロ レゼルバ